贈与に限らず、不動産の取引では、必ず「契約書」が作成されます。
ここでは、なぜ契約書が必要なのか、作成時に記載すべき必要事項や、注意点などを解説していきます。
最新の法令等については、弁護士・宅建士などの専門家に確認することをおすすめします。
契約書が必要な理由
契約書の作成は、契約当事者の間に信頼関係を築くための重要な手段であり、以下のような目的があります。
証跡を残す
実は、不動産の取引については、民法によれば、契約当事者間の口頭での合意だけでも成立します。
しかし証跡が無ければ、契約事項の証明ができません。
そのため、契約内容を記した契約書を取り交わすことが一般的です。
名義変更に必要
不動産を取得した場合、
それを第三者に対抗(自分のものだと主張)するためには、登記(名義変更)をする必要があり、
登記をするためには、登記原因証明情報として売買契約書が必要になります。
つまり、不動産の取引では、のちの名義変更をするために、契約書が必要となるのです。
契約書作成の注意点
最低限の記載事項
実は、契約書には決まった形式は無く、
契約内容は当事者同士で決めるものであり、絶対的な答えがあるわけではありません。
しかし、下記の作成例にある通り、
主な記載事項として、少なくとも以下の5点は記載しましょう。
「①誰から」(贈与者)
「②誰に」(受贈者)
「③何を」(目的物)
「④いつ」(日時)
「⑤どのように」(引渡し)
不動産贈与契約書(作成例)
贈与者 (以下、「甲」という)と受贈者 (以下、「乙」という)は、以下のとおり贈与契約を締結した。
第1条(贈与の合意)
甲は、乙に対し、後記「不動産の表示」記載の不動産(以下「本件不動産」という。)を贈与し、乙はこれを承諾した。
第2条(引渡・登記手続)
甲は、乙に対し、 年 月 日までに本件不動産を引き渡し、かつ本契約締結後速やかにその所有権移転登記手続を行う。所有権移転登記手続に必要な一切の費用は乙の負担とする。
第3条(公租公課の負担)
本件不動産に係る公租公課の負担は、 年 月 日までに相応する部分を甲の負担とし、その翌日以降に相応する部分は乙の負担とする。
第4条(残置物の所有権放棄)
本件不動産の引渡し後、本件不動産に残置する造作設備、家具備品、樹木庭石、その他一切の物につき、甲はその全ての所有権を放棄し、乙は任意に処分撤去等できるものとする。
第5条(注意義務)
甲は、故意または重大な過失による場合を除き、債務不履行の責任を負わない。
本契約の成立を証するため、本書を2通作成し、記名捺印のうえ、甲乙各1通を保有するものとする。
年 月 日
贈与者(甲) 住 所
氏 名 ㊞
受贈者(乙) 住 所
氏 名 ㊞
不動産の表示
<土地>
所 在 東京都○○区△△1丁目
地 番 2番3号
地 目 宅地
地 積 200.00㎡
<家屋>
所 在 東京都○○区△△1丁目2番3号
家屋番号 2番3号
地 目 居宅
構 造 木造セメント瓦葺2階建
床 面 積 1階70.00㎡
2階35.00㎡
所 在 東京都○○区△△1丁目 番 号
家屋番号 番 号
地 目 付属一般
構 造 木造
床 面 積 ㎡
土地については登記上の表示とし、家屋については未登記のため、固定資産税・都市計画税課税明細書に記載されている表示のとおりとする。
以上
土地の場合:「所在」「地番」「地目」「地積」を記載
建物の場合:「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」を記載
家屋番号や地番については、
普段使いの住所表記ではなく、登記事項証明書に書かれてある正確な表記を記載しましょう。
建物が未登記の場合には、家屋番号は「未登記」とし、
「固定資産税課税明細書に記載されている表示のとおりとする。」と記載しておきましょう。
*とくに地方の田舎では、未登記の建物が少なくありません。
(未登記建物とは、何らかの事情で建築後の表題登記が行われておらず、登記情報そのものが存在しない建物です。)
認印 or 実印
認印でも問題はありません。
ただし、お互いの安心面から、実印を使用するケースもあります。
最後は、2通それぞれに押印し、契約完了となります。
(契約当事者の双方が契約書を1部ずつ持ち帰ります。)
まとめ
以上、契約書が必要な理由や、作成における注意点について解説しました。
NISUMELでは契約書のひな型(Wordファイル)も取りそろえております。
契約書を正しく作成することで、後のトラブルを回避し、
お互いが安心して、気持ちよく取引ができるようにしましょう。